carmine跡地

はてダの跡地です

KinKi Kids「24/7 G album」

1.Bonnie Butterfly
2.永遠のBLOODS(G-mix)
3.Destination
4.世界中のみんなで…。
5.黒い朝・白い夜
6.消えない悲しみ 消せない記憶
7.薄荷キャンディー
8.Another Christmas
9.Virtual Reality
10.ORANGE
11.停電の夜には~On the night of a blackout~
12.どらごん・ろ〜ど
13.心に夢を君には愛を



意表を突いて始まるM-1が 掴みとして非常に良い。明るく爽やかなアイドルポップとは一線を画した渋くて少し危うい色気のある曲。そして堂本剛の感性が光るとでも言うのか、彼の言葉はとても音楽的で耳にすんなり入ってくる。ラップとは違うメロディアスなラインだがたたみかけるような英詩で始まるこの曲は剛の歌うメロディラインがとても音楽的。英語の発音に違和感が無いのはきっと言語を頭で解しているのではなく「音」として感じ取る才能があるのだろう、と思わせられる。曲自体の構成の格好良さにしびれる佳曲。コンサートのオープニングで披露されたアレンジは相当ガツンと来た。

一転して明るい太陽をイメージさせられるM-2。コカコーラのCM曲にもなっていたが夏の明るさと開放感にどっぷり浸らせてくれる曲だ。この曲を聴くとKinKi Kidsの成長を感じるというか 彼らが10代の頃から数々歌われてきた夏歌と比べると奥行きのある曲に仕上がっている。大人だって夏が眼前に広がっていればそこに向かって駆け出したくなるんだぞ、という感じ。個人的には 毎年夏になると南の島に出かけるのだが飛行場から一歩踏み出して南の空気を吸い込んだ瞬間に聴きたい。それまで着ていたジャケットを脱ぎ捨てて走り出したい、そんな曲。

ミラーボールが頭の中で回りまくるM-3。曲としてはどこかで聴いたことのあるような懐かしのディスコチューンだ。アレンジがダンス☆マンなだけあってファンキーに仕上がっている。ここでも堂本剛の言語感覚は非常になめらか。

世界情勢を憂えた歌詞のM-4。楽曲としてはありきたりだが、二人の柔らかく伸びるボーカルが印象的だ。堂本光一の歌唱はここではもう少し癖を抑えたほうがより素直に心に響くんじゃないだろうか。ところどころ力みすぎているのが少し残念。

堂本剛ソロ曲のM-5。堂島孝平からの楽曲提供。疾走感のあるナンバーに仕上がっている。車で湾岸を飛ばしながら聴いたらさぞかし気分がいいだろう。無難に歌いこなしている、という印象。

堂本光一自作のソロ曲M-6。1曲前の剛ソロとはうって変わってオーケストラアレンジで壮大に歌い上げる。なんて言ったら良いのか、例えるならばX JAPANのような壮大さ。少々大仰な歌唱も曲の雰囲気にぴったりはまっており、その世界観に一気に引き込まれる。先日上演された彼主演のミュージカルで劇中歌としても披露されたが、まるでそのためにつくったかのようなはまりっぷりだった。この曲からも剛と光一のカラーの違いがはっきり伺える。

透明感のあるブルーをイメージさせるM-7。楽曲も良いが「薄荷キャンディー」というタイトルも秀逸な一曲。剛の張りのある伸びやかな声に光一の少し硬質な声が溶け込んだハモリが耳に心地よい。大サビ部分の「君だけ〜♪」と溜める部分は剛ではなく光一が歌って正解だろう。剛の情感たっぷりでドラマティックすぎる声よりも光一の硬質さが残る真っ直ぐな声のほうがこの曲の透明感を印象付けるには合っている。

クリスマスソングとしても聴けるM-8。別れの歌だけど。音に対して言葉がかなり詰め込まれている部分があり、光一の滑舌がすこし不安に感じる。今にも噛みそうだ。噛んでませんけどね。剛パートは不安無し。剛は本当に言語感覚が音楽的だ。

そしてまたソロ曲が挟まれる。光一ソロ曲M-9。電子音も印象的な、タイトル通りの無機的な楽曲。そこに光一の声が乗ることで生々しさが加わり、妙に艶っぽく仕上がっている。歌詞には「24時間」「週7日間」などアルバムタイトルを思い起こさせる印象的な言葉が散りばめられている。

堂本剛自作ソロ曲M-10。彼の中の情念とでもいうべき感情が噴出している。完成度などは決して高いというわけでは無いが、とにかく濃い。自己の世界にこれだけ浸れるというのはアーティストとしての才能かもしれない。


ここまで一気に書いてきたらなんだか飽きてきてしまいました。


M-11、M-12、M-13はそのまま続けてさらっと聴ける。M-13がいい感じに爽やかなので聴了感はとても爽やかなのだが、中盤の濃さが一気に吹き飛んでしまうのが残念でもある。

全体としては胃もたれしないように重さを配分されてる印象だが、そのぶん1枚通して聴き終わったあとに全体的なイメージを捉えにくくもある。トータルプロデュースされたアルバムが優れているというわけでは決して無いが、オープニングで気分が高揚し更に中盤が興味深いだけに、もっと濃密なアルバムに仕上げても良かったのではないかと思ってしまう。
前回の「F album」でアイドル歌謡から本格的に脱して次のステージに踏み出した彼らだが、今回はそこと同じステージにとどまっているように思う。もっとマニアックにつきつめていってもリスナーはついていける筈だ。自分で作詞作曲をしなければ音楽的評価が得られないわけでは決して無い。そして彼らのようなアイドルは音楽製作側からしても非常にプロデュースし甲斐のある素材ではないだろうか。男性アイドルではあまりそういう例は見られないが、深田恭子中島美嘉のような素質は充分ある。自作曲を取り入れて自身の音楽的成長を積極的に促すのも良いが、KinKi Kidsという素材でもっと実験してみても良いのではないかと思う。
ヘビーな邦楽リスナーや洋楽リスナーが聴いて「え?KinKi Kidsってこんな面白いことしてたの?」と驚くさまが見てみたい。